二十数年前、ハヌマンという大分市の出版社が出した「BAHAN」という本で、湯布院を「ゆふいん千年時計の音」と題していました。
由布岳の内蔵する千年刻みか万年刻みか、あるいは数字では表せないリズムなのかもしれない由布岳の持つ秘密のリズムが、湯布院へ訪れた人々を日常の二十四時間時計の呪縛から解き放つというのです。
確かにその昔、湯布院は時の流れのゆるやかな処でした。戦後の高度経済成長時代にも取り残されたひなびた町でした。その後町興しの先達の活躍で湯布院温泉は全国有数の人気観光地へと発展します。由布岳もまた近年の登山ブームで多くの登山者で賑わっています。
反面、残念なことに「ゆふいん千年時計」は狂いを生じ、「ゆふいん」の持つゆるやかな時の流れは急激に加速したように思えます。湯布院には多すぎる人と車が自然のもつリズムをかき消しているのでしょう。
先日、久しぶりに安心院町の『三女神社』と宇佐市にある古代遺跡、『佐多の京石』へ行ってきました。どちらからも遠くに由布岳が望め、古代の人々にとって由布岳がどのような意味、象徴性を持っていたのか考えさせられました。懐かしいものが湧いてくる眺めでもありました。由布岳をじっと眺めているとまた千年時計の音が聞こえてきそうで、うれしくなった小旅行でした。
三女神社より由布岳
三女神社の三柱石
米神山の京石
京石より由布岳