2013年5月4日土曜日

オキナグサ

宮沢賢治「おきなぐさ」より。


「大すきです。だれだってあの人をきらいなものはありません」
「けれどもあの花はまっ黒だよ」
「いいえ、黒く見えるときもそれはあります。けれどもまるでえあがってまっ赤な時もあります」
「はてな、お前たちのにはそんなぐあいに見えるのかい」


「いいえ、お日さまの光のる時ならだれにだってまっ赤に見えるだろうと思います」
「そうそう。もうわかったよ。お前たちはいつでも花をすかして見るのだから」

「ねえ、雲がまたお日さんにかかるよ。そらこうのはたけがもうかげになった」
「走って来る、早いねえ、もうからまつくらくなった。もうえた」
「来た、来た。おおくらい。きゅうにあたりが青くしんとなった」


「うん、だけどもう雲が半分お日さんの下をくぐってしまったよ。すぐ明るくなるんだよ」
「もう出る。そら、ああ明るくなった」

「だめだい。また来るよ、そら、ね、もうこうのポプラの木が黒くなったろう」

「うん。まるでまわり燈籠どうろうのようだねえ」



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